働き方をデザインする

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スクール・サポート・スタッフ(SSS)の立場から教職員の職場環境を変えたい人のブログ

パラプロフェッショナルとは何か①

アメリカでは、「パラプロフェッショナル(Paraprofessional)」という職業の人が学校スタッフとして働いています。弁護士業務を補助する人が「パラリーガル」と言われているように、教員の業務を補助する人が「パラプロフェッショナル」と言われています。*1

 

調べてみると、まるで、日本における「スクール・サポート・スタッフ(SSS)」「学習指導員」「特別支援教育支援員」が組み合わさって発展した職業のようだと思いました。

学校に教員以外の専門スタッフを配置することは教員の多忙化を解消する手立ての一つだと考えています。今回はその一つであるアメリカにおける「パラプロフェッショナル」について調べてみました。

 

どのような仕事をするのか

1950年代、アメリカでは教員不足が起こったため、教育には携わらない業務を行う人材として「教員補佐」が雇われ始めました。しかし、年々、求められる業務が変化してきて、今では、パラプロフェッショナルではなく「パラエデュケーター(Paraeducator、教育者と並んで働く人)」という名称でも呼ばれます。

 

パラプロフェッショナル(パラエデュケーター)が雇われ始めた1950年代の業務内容については次のように言われています。(野口・米田 2010、p.105)*2

1950 年代にParaeducatorは、各費用の徴収、出欠確認、教材準備、電話の応対、書類の管理、掲示板の飾り付けなど、主に児童生徒の指導に直接関わらない仕事を担っていた。(中略)しかしその一方、児童生徒への読み聞かせや、学びの遅い子や欠席の児童への補足的な指導など、児童生徒の指導に直接関わる仕事も担っていたことが明らかになった。

 

そして現在のパラプロフェッショナルの業務内容は次の7つです。NCLB法(2001年に改正された初等中等教育法)という法律に記載されています。

①児童生徒が担任教師から指導を受けていない時間に一対一の個別指導を行う

②指導用の教材を整理したり、クラス管理を補助したりする

③パソコン室で支援をする

④保護者との活動を実施する

⑤図書室で支援をする

⑥通訳としての機能を果たす

⑦資格を有する教師の下で指導を行う

(引用:野口・米田 2010、p.107)*2

  

つまり、最初は、現在の日本のSSSのような仕事をする人として雇われたが、学習指導員や特別支援教育支援員のような仕事も受け持つようになり、現在はどちらも担うようになったということです。業務の変遷の様子は下の図がとても分かりやすいので直接引用させていただきました。(野口・米田 2010、p.106)*2

 

パラプロフェッショナルの業務の変遷


 私も普段からやっている、やったことがある業務もありますし、やったことがない(担当の教員または別のスタッフが居る)業務もあります。業務が多岐に渡っているという点については、かなり親近感をもちます!

 

パラプロフェッショナルはどれくらい居るか

パラプロフェッショナルは全米の統計によると、2002年のNCLB法制定後の2003年度において633,671 人(Title I 以外の者も含む。)がおり、公立の小中学校の91%に配置されている(平均すると1校あたり約8人)。パラプロフェッショナルの74.5%がフルタイムで雇用されている。パラプロフェッショナルの約半数(311,908 人)は、特別支援教育(special education paraprofessional)のために雇用されている(1校あたり平均5人)。 

 と言われています。(小松・橋本 2013、p.7)*3

 

日本でのスタッフの人数は下記の表のとおりです。(表は筆者作成)*4

日本のスタッフの人数(学習指導員、スクール・サポート・スタッフ、特別支援教育支援員)


 なお、スクール・サポート・スタッフと学習指導員の人数は、令和2年度の予算(補正予算含む)で表されている人数です。*5 予算どおり人が配置されていればこの人数が居るということです。

特別支援教育支援員の人数は2011年5月1日の実数です。*6

アメリカの「平均して1校あたり8人スタッフが居る」というのは、日本と比べてかなり手厚いと言えます。

  

パラプロフェッショナルの採用条件は法律で決められている

先程出てきたNCLB法(改正 初等中等教育法)で初めて、パラプロフェッショナルの採用条件について明文化されています。採用条件は、私の解釈でざっくりと言うと、高卒以上であり、テストで一定以上の点数をとることです。

テストは、ほぼ全国で実施している共通のものがありますが、何点以上取ればよいかは募集している州によります。また、州によっては大卒以上という条件のところもあるようです。

 

国の法律に採用条件や業務内容が記載されているのは、それほど、パラプロフェッショナルという仕事の重要性が認識されているということでしょう。

 

 おわりに

<次回予告>

パラプロフェッショナルがどのような職業なのか、少しイメージができましたでしょうか?業務内容以外のこと、例えば、『給料』や『待遇』などについても気になると思いますが、それは次回に続きます!

「なぜパラプロフェッショナルについての記事を書いているのか」については、前回の記事をご覧ください。

 

 

<参考資料(注釈)>

 *1:National Resource Center for Paraeducators

「What’s In a Name?」

https://nrcpara.org/paranews/whats-in-a-name-2/

【今回の記事作成にあたり、かなり参考にさせていただきました。】

*2:野口晃菜・米田 宏樹(2010年)

「米国におけるParaeducatorの役割の変遷」

https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=41290&item_no=1&page_id=13&block_id=83

【今回の記事作成にあたり、かなり参考にさせていただきました。】

*3国立教育政策研究所 小松明希子・橋本昭彦(2013年)

「Co-teachingスタッフや外部人材を生かした学校組織開発と教職員組織の在り方に関する総合的研究(外国研究班)最終報告書」

(p.1-19、研究代表者 葉養正明)

https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h24/report_list_h24_3_2.html

*4文部科学省 学校基本調査 平成30年度 調査結果の概要(初等中等教育機関専修学校各種学校)(p.5,8)

https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/12/25/1407449_2.pdf

*5文部科学省 令和2年度の予算

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672.htm

*6文部科学省 資料8:特別支援教育支援員について

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1312984.htm

 

アイキャッチ画像は写真ACより引用し加工しました。

2021/4/3 文章の体裁を整えました