今回は「パラプロフェッショナル」の給料や待遇についてお伝えします。
前回の記事の続きですので、まだの方は先にこちらをご覧ください。
給料
教職員の採用は州、特に学区ごとに行われているので、給与や待遇についても学区によって違います。(アメリカの中で一番人口の多いカリフォルニア州の)サンフランシスコ市の場合は、次のとおりです。*1
表の上から3つ、「特別支援補助教員」「補助教員」「清掃員」は、日本で言う「特別支援教育支援員」「学習指導員」「スクール・サポート・スタッフ」に近いのではないかと思います。
私が調べたところ、日本のどの地域においても、この3つの職業の時給はおおよそ最低賃金の1.1倍でした。
引用した上の表(報告書)が作成された2013年当時のカリフォルニア州の最低賃金は8$ですので、賃金はどれも最低賃金の2倍以上はあります。
そのため、サンフランシスコ市の方が、日本のスタッフと比べて給料が良いと言えます。
大規模な組織がある
アメリカには「全米教育協会」(The National Education Association of the United States:通称NEA)という教育団体があります。(https://www.nea.org/)
- 創立は1857年
- メンバーは約300万人
- すべての州と14,000を超えるコミュニティに関連組織がある
という歴史のあるアメリカ最大の教育団体です。
活動目標は「教員の資質向上,教育技術の改善,教育立法の推進,勤務条件や身分保障の改善など」と言われています。*2
メンバーの中には当然、教員も所属していますが、ESP(Education Support Professionals)と呼ばれる「教育支援専門家」も所属しています。ESPは教員以外のスタッフ全般を表しているので、パラプロフェッショナルも含まれ、警備やIT担当の人などパラプロフェッショナル以外の人も含まれています。
法的な組織もある
パラエデュケーターのための国立資源センター(National Resource Center for Paraeducators:通称NRCP)という組織もあります。(https://nrcpara.org/)
設立は1979年なので先述のNEAより遅いですが、国立の(国の資金で設立された)組織であるということが重要です。
- 「パラプロフェッショナル(パラエデュケーター)になるためにはどうすれば良いか」などの情報提供
- パラプロフェッショナルになるための参考書の製造・販売
などを行っています。
他にも、次のような商品の販売もあります。*3
(原文は英語ですが、Google翻訳にて翻訳された文章が載っています。)
なんとパラエデュケーターTシャツが売っています!それだけで何だか楽しそうです。
また、NEAやNRCP以外にも様々な組織があるようです。
同じ仕事をする同志で繋がることができるのは、何とも心強いことでしょう。
研修とキャリアアップ
NRCPでは、パラプロフェッショナルのための研修を受けることができます。
また、ワシントン州では、次のような「ハンドブック」を作成しており、パラプロフェッショナルがどのように仕事を行うべきか、どのような点に注意すべきかなどを伝えています。*4
さらに、カリフォルニア州では、下記のとおり、パラプロフェッショナルがキャリアアップするための研修が用意されています。
カリフォルニア州では教育補助スタッフであるパラプロフェッショナルを正規の公立学校教員にするための「California School Paraprofessional Teacher Training Program (PTTP)」という研修プログラムがある。この研修は1990 年に法案が可決され、1995 年に助成が開始された。2011 年夏現在までに、2,175 名がプログラムを修了している。(引用:小松・橋本 2013、p.14)*1
パラプロフェッショナルについて、まとめ
パラプロフェッショナル(パラエデュケーター)は、教員ではありませんが、教員とともに教育に携わるプロフェッショナルです。採用条件、業務内容は法律に記載されており、高い専門性が求められますが、その分、給料は日本より高く設定されています。それだけでなく、公式・非公式に関わらず組織がたくさん存在しており、パラプロフェッショナル同士で支えあう仕組みがあります。
私の意見とメッセージ
アメリカの「パラプロフェッショナル」は職業の一つとして確立されていますが、日本のスタッフについては、まだそうではありません。しかし、そのパラプロフェッショナルも当初は単なる事務スタッフとして雇われていて、それが必要に応じて発展してきたという歴史があります。
そのため、日本のスタッフも、これから発展していくと考えています。
SSSを含むスタッフの方々が、パラプロフェッショナルの存在を知ることで、「この仕事は発展途上な仕事であり、今その発展を支えている。最前線に居るんだ!」と考えて業務を行えるようになれば、今までよりも一層、仕事に誇りを持ち、楽しく仕事ができるのではないかと考えました。
日本でもSSSの組織ができたりするのかな?とか考えたら面白いじゃないですか。
また、一緒に働く教員の方々には、仕事は「いろいろなスタッフと協働していくことができる」と思ってもらえれば、必要以上の負担を抱え込まずに居てもらえるのかなと思いました。
そして、スタッフの配置を考える国や自治体の方々には、スタッフは何かの穴埋めをするための要員ではなく、教員と協働する「教育的専門スタッフ」であるという視点を持ってもらいたいなと思っています。
この記事が、視点を広げるきっかけになれば嬉しいです。
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<参考資料(注釈)>
*1:【今回の記事作成にあたり、かなり参考にさせていただきました。】
国立教育政策研究所 小松明希子・橋本昭彦(2013年)
「Co-teachingスタッフや外部人材を生かした学校組織開発と教職員組織の在り方に関する総合的研究(外国研究班)最終報告書」
(p.1-19、研究代表者 葉養正明)
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h24/report_list_h24_3_2.html
*2:活動目標はもちろん、NEAのホームページにも記載がありますが、ここでは簡潔な説明文であるコトバンクの文章を引用しました。(https://kotobank.jp/word/NEA-37031)
*3:https://nrcpara.org/our-storefront/
*4:http://www.paraeducator.com/resources/parahandbook.pdf?fbclid=IwAR3456n1AdUliFgIR4lKkEgKwj7-P5RtI1aY0J0D16b_fO-84bhqc21bCRA
【このページ内での引用はありませんが、今回の関連記事作成にあたり、かなり参考にさせていただきましたので、参考資料として記載します。】
野口晃菜・米田 宏樹(2010年)
「米国におけるParaeducatorの役割の変遷」
※アイキャッチ画像は写真ACより引用し加工しました。
<参考記事>
なぜパラプロフェッショナルについて書いたのかについては、こちらの記事をご覧ください。