働き方をデザインする

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スクール・サポート・スタッフ(SSS)の立場から教職員の職場環境を変えたい人のブログ

概算要求と予算の資料から何が読み取れるか(教員業務支援員)

先月末に、令和5年度(2023年度)の概算要求が発表されました。そこで、

  • 教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ、SSS)の概算要求額と予算額の推移
  • 学習指導員など他の支援スタッフとの予算額の差

を調べ、資料から読み取れることを考えてみました。

 

 

概算要求とは

概算要求とは、各省庁が財務省に「来年度の予算はこれぐらい欲しい」と要求することです。毎年、8月に発表されます。希望額なので全て予算化されるとは限りません。予算案は12月に発表され、翌年3月に正式決定されます。

 

概算要求と予算の推移

SSSについての来年度(令和5年度)の概算要求額は『103億円、24300人分』です。24300人とは、全国のほぼ全ての小中学校において、1校に1人ずつ配置できる人数です。

 

文科省R5概算要求(教員業務支援員)

引用:05-1 令和5年度概算要求主要事項(初等中等教育局)① ,p12
https://www.mext.go.jp/content/20220829-mxt_kouhou02-000024712_5-1.pdf

 

コロナの広まりによりSSSの人数が大幅に増えたのが令和2年度です。それ以降、『1校に1人配置』できるような概算要求が続けて行われています。

 

現在(令和4年度)の実際の予算額は『45億円、10650人分』です。この数字から、現在はおおよそ『2校に1人』の割合でSSSが居ると考えられます。

 

先生たちの労働量を考えると、SSSは『1校に1人』は必要だと思います。1校に複数人居ても良いぐらいだとも思っているので、まずは、1校に1人分の予算が通ってほしいなと思います。

 

教員業務支援員の概算要求と予算の推移

表はアヤコ作成

 

他のスタッフの予算と比較

SSSの予算は「補習等のための指導員等派遣事業」というグループの中にあり、

  • 教員業務支援員(SSS)
  • 学習指導員
  • 部活動指導員

が3本柱になっています。

 

R5概算要求(補習等のための指導員等派遣事業)

引用:05-1 令和5年度概算要求主要事項(初等中等教育局)① ,p11
https://www.mext.go.jp/content/20220829-mxt_kouhou02-000024712_5-1.pdf

 

この中で一番、概算要求額が多く、実際の予算額も多いのがSSSです。また、SSSの予算は平成30年度(2018年度)に初めて計上されてから毎年増加していて、当初の約4倍になっています。他の2種類の予算も増えてはいますが、約4倍に増えたのはSSSだけです。

(※令和4年度から部活動指導員の予算は文科省の予算ではなくなっています)

 

このことから、SSSはかなり重要視されていて求められていることが分かります。

 

予算の推移(補習等のための指導員等派遣事業)

表はアヤコ作成

現在SSSである私の考察

SSSの予算が増えて、人数が増え、認知度が高まり、全国的に広まってほしいなと思います。しかし、私を含め現在既にSSSとして働いている人にとっては、自身の待遇が今後どのように変化するのかが気になるところです。

 

SSS一人あたりの金額

お金の話で一番気になるのは「自分の給料が増えるのかどうか」ではないでしょうか。

 

今年度の予算額は『45億円、10650人分』です。『45億円÷10650人』で単純計算すると、一人あたり約42.3万円です。来年度の概算要求額は『103億円、24300人分』で、これも単純計算すると、一人あたり約42.4万円とほぼ同じです。

SSSの給料の3分の1は国が負担、3分の2は都道府県・指定都市が負担するので、これも単純計算すると、『一人のSSSを雇うのに約126万円掛かっている』ことが分かります。

 

この一人あたりの金額が増えないと、給料は増えないのではないかと思われます。

 

雇用人数は増加、勤務時間は減少?

以前、年度が変わった時期に「都道府県や市町村全体でSSSの配置人数(配置校)は増えたが、1人あたりの労働時間は減った」という話を聞いたことがあります。この話の真相は分かりませんが、『社会保険料』と『期末手当』が関係しているのではないかと予想しています。

 

社会保険は『勤務時間が週20時間以上』が加入の対象になります。期末手当はいわゆるボーナスのことで、支給条件は都道府県や市区町村によって違うのですが、『勤務時間が週15時間30分以上』などと決まっている地域が多いです。

 

そのため、例えば、『労働時間が週20時間のSSSを1人雇う』より『労働時間が週10時間のSSSを2人雇う』方が自治体(雇用主)の負担は少なく抑えられます。既に働いている人にとっては労働時間が20時間から10時間に減ってしまうので、給料が少なくなるなどの悪影響を受けることになります。

 

上記2点から考えること

これらのことから、現在既にSSSとして働いている人にとっては、国の予算が増えてもあまり影響が無かったり、むしろ悪影響を被ることもあるかもしれません。

SSSがまだ2校に1校の割合でしか居ないので、まずは人数を広めることが先だとは思います。しかし、もう既に数年に渡りSSSを続けている人も増えてきたので、その人たちの待遇改善や雇用を守ることもそろそろ考えられるべきだと思います。

 

まとめ

(1)事実

教員業務支援員(SSS)の

  • 来年度の概算要求額は、SSSを1校に1人配置できる金額
  • 概算要求・予算は年々増加し続けている
  • 予算の増加量は他のスタッフのものよりも大きい
  • 一人あたりの金額は増えていない(今年度予算と来年度概算要求を比較)

 

(2)私見

  • SSSは1校に1人以上居てもいいぐらいなので、まずは、1校に1人分の予算が通ってほしい
  • さらに、現在既にSSSをしている人の待遇改善も考えられてほしい

 

 

【参考資料】

令和5年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧(8月)

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420668_00004.html

令和4年度予算

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672_00003.htm

令和3年度予算

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672_00002.htm

令和2年度予算

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672.htm

2019年度予算

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h31/1408722.htm

平成30年度予算

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11293659/www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h30/1394803.htm