働き方をデザインする

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スクール・サポート・スタッフ(SSS)の立場から教職員の職場環境を変えたい人のブログ

今在るものを無くすと、今より悪くなるのか?

 

あいさつ運動が無くなると寂しい?

私が勤務している学校では「あいさつ運動」という取り組みがあります。1か月に1週間、その期間は教員が門の前に立って挨拶を行うことになっています。

私も一緒に立ったことがあるのですが、正直に言って「これ意味あるのかな?」と思いました。挨拶する子はするし、しない子はしない。「今日は特に挨拶をしましょう」という指導もどうなのかなと思いますし、下校時は、そもそも帰る時間がバラバラなのでその時間に門を通らない子も居ます

先日、担当の先生とお話しする機会があったときに聞いてみました。

 

私「あいさつ運動の効果って…どうなんですかね?(おそるおそる)」

 

あいさつ運動担当の先生「殆ど無いですね(キッパリ)

 

 

悩んでいる女性のイラスト

 引用:ソコスト

 

 

聞いたところによると、昨年も廃止の案が出たそうなのですが、無くすのはあんまりではないか(※)というような声があったそうで、月に1回に減らしたそうです。

(※)どういう理由か忘れてしまいましたが、「この地域では昔から行ってきた」「全く無いのは寂しい(寂しく見える)」「学校は挨拶指導をしないのかと言われてしまう」というような理由だったと思います。

 

つまり、今行っていることを止めるのは悪影響だという判断をしたことになりますが、本当に、今やっていることを止めることは悪いことなのでしょうか

 

部活を無くすと部活に入っている子が可哀そう?

話は変わりますが、部活動を無くそうという話があります。「部活動の指導は、本来は教員の仕事では無いので、部活動を無くす(学校と切り離し、外部・地域に任せる)べきではないか」ということです。

もちろん賛成意見もあれば反対意見もあります。反対意見の中には、「部活動が無くなってしまったら、そのスポーツ等をできなくなってしまう子どもたちが可哀そう」というものがあります。これは、部活動に関わるどの立場の人も一番気になっている部分ではないかと思います。

 

しかし、もっと視点を広げて考えてみるのが良いのかもしれません。

 

先日、『学校の「当たり前」をやめた。』という本を読みました。

「宿題」「クラス担任」「中間・期末テスト」など、当たり前だと思われていることを廃止して学校改革を進めたことで有名な麹町中学校の話が載っているのですが、私が気になったのは特に部活動の話です。

 

麹町中学校には「麹中アフタースクール」というものがあります。(下の表のとおり。)一般的な「部活動」の他に、現役大学生が運営する「塾」や、その道の専門家が外部講師として教えてくれるプログラミングサークルなどの「サークル」があるそうです。

サークルの中には「麹中ファーム」「フォトグラフサークル」などがあり、学校の庭で農場経営したり、写真の撮り方を学んだりします。

麹町中学校アフタースクールの内容

(表は、工藤 2018 p.135 図3の内容をそのまま引用)

この表を見るとワクワクしませんか?

 

普通の部活動にも楽しさはあると思いますが、このようなサークルも楽しそうです。部活動を廃止しても、このような新しいサークルが出来るかもしれないと考えると、部活動廃止がそこまで悪いことではない、むしろ良い効果が出るかもしれないという期待ができます。

もちろん、麹町中学校と同じように指導者が集まるのかなど心配なこともあるでしょうが、一度、視点を広く持ってみることが大事だと思います。

 

あいさつ運動を無くしたら、より良くなるかもしれない

話は戻りますが、あいさつ運動を無くすことで、

  • 先生方の負担が減り、子どもと関わる時間が増え、学級の状態が良くなる
  • 「あいさつ運動」以上に効果のある取り組みが生み出される

など良い結果がもたらされるかもしれません。

 

今あるものを無くそうとすると、無くなるものに注目が行きがちですが、無くすことで新しく得られるものもあるという視点が大事だと思っています。何事においても。

 

まとめ

私は今、スクール・サポート・スタッフ(SSS)として働いています。SSSは教員の負担軽減のための制度であり、その効果は、少しは出せているだろうと自負していますが、私一人の働きだけでは全然足りないと思っています。

全員の先生が定時内に業務を終えるには、根本的な業務量が減らないと難しいと思います。(自分で言うのは悲しいですが)

 

その一方で、取り組みを無くす難しさも分かります。私の勤務校では、「児童の親も同じ学校に通っていた」「親戚も通っている」という話をよく聞きます。そのような話が聞こえてきて、その子どもや親の顔が思い浮かんだとき、決断するのが難しくなる心情は理解できます。

しかし、今在るものを無くすことがゼロもしくはマイナスになるのではなく、プラスになることもあるという意識を持って、積極的に業務削減に取り組んでいきたいと思っています。

 

<参考資料>

千代田区麹町中学校長 工藤勇一(2018) 『学校の「当たり前」をやめた。-生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革―』 時事通信社.

 

<さいごに>

本来の記事はここまででしたが、1つ追記します。

今週中にも2度目の緊急事態宣言を発出する予定だとニュースになりました。コロナ下では、無くしたくないものまで無くさずを得ないことも発生したと思います。しかし、それでも、物事は「無くす→悪化」のように単純に結果が結びつくものではないと考えています。逆に、「無くす→良い結果」とも限らないので、最善のために考え続け、行動を重ねていくことが大事なのだと私は考えています。

 

2022/4/3 目次・見出しを付けました