現在、スクール・サポート・スタッフ(SSS)を配置している学校は多くありません。しかし、今後の学校は、SSSのような『教員が行っている仕事を行う教員以外の人材』を確保することを考えざるを得なくなるでしょう。そのときに、現在既に居るSSSの存在価値は高まると考えています。
『価値が高まる』きっかけは?
SSSの価値が高まるきっかけの一つに、田中まさお先生の裁判があると考えています。
埼玉県の小学校教員(今は定年退職されていて再雇用で働いていらっしゃる)の田中まさお先生(仮名)が、教員の長時間労働の違法性を訴え、埼玉県を相手に裁判を行っています。そして、どうやら、それが上手くいきそう(勝訴しそう)だということを聞きました。
裁判の概要
田中先生の訴えは、
- 教員は勤務時間外の17時以降も「業務」を行っている実態がある(1日8時間を超えて働いている)
- それは労働基準法違反である
- 36協定を結び、割増賃金を支払うべき
というものです。
労働基準法の第32条で「労働時間は1日8時間、1週間40時間を超えてはいけない」と決められています。それを超えて働かせるには「36協定」を結ばないといけないのですが、教員は結んでいません。それが違法であると訴えているのです。
ところで、公立の教員には「給特法」と呼ばれる特別な法律が適用されています。これによって、「教員の仕事は特殊だから、長時間労働は仕方がない」という拡大解釈(誤った認識)が起こっていたのですが、今回の田中先生の裁判は、「給特法ではなく、労働基準法に違反している」という点を指摘しています。これには、埼玉県も「教員の仕事が特殊だから」という言い逃れはできません。そのため、田中先生の裁判は勝訴できるのではないかという期待が高まっています。判決日は9月17日(金)です。
勝訴すればどうなる?
もし、勝訴すれば、埼玉県は田中先生に請求された金額(残業代)を支給しなければなりません。
そして、その影響は
- 田中先生だけでなく埼玉県全体に
- 埼玉県から全国に
- 過去の残業代だけでなく今後の残業代についても
広がっていくでしょう。
残業代抑制の策
裁判が勝訴すれば、各都道府県は教員に残業代を払う必要が出てきます。しかし、教員全員分となると巨額なので、支払わずに済むような対策が取られることでしょう。
対策として一番の策は『業務削減』して、教員が定時に帰れるようにすることでしょう。しかし、「子どものために」で増えてきた業務を一気には削減できないのではと考えています。
そこで、第二の策として、「教員より安い人材を雇うことで人手不足を解消する」という対策が取られるのではないかと考えています。私の予想では、『ボランティアまたは会計年度任用職員(パートタイム)』が募集されると考えています。役割は
- 部活動指導員
- 学習指導員
- ICT支援員
- スクールサポートスタッフ
が定番(?)ですが、
- 登下校の見守り
- 給食時の見守り
- 清掃員
などの人が募集されるかもしれません。
SSSの価値が高まる
低賃金の人を雇い問題を解決しようという手法についてはさておき、こうなれば、現職のSSSの存在価値はかなり高まります。すでに学校現場のことを知っていて、自由度の高い動きができる人材だからです。今以上の働きを期待されるでしょう。「業務時間を長くしてほしい」という提案があるかもしれません。
また、新しく人が入ってきたときには、学校のあれこれを教えてあげる役割を担う必要が自然と出てくるでしょう。会計年度任用職員の監督者は管理職の先生ですが、管理職の先生が手取り足取り教える訳ではないということは現職のSSSのみなさんならご存じのはずです。
まとめ
田中先生の裁判が勝訴する
→埼玉県は田中先生に残業代を支払う
→各都道府県は教員に残業代を支払う必要が出てくる
→なるべくお金を掛けない対策を取ろうとする
→賃金の安い人材を募集する、もしくは、SSSの勤務時間が長くなる
→現在のSSSは貴重な存在になる(すでに経験値があるため)
9月17日(金)の判決に注目ですね!
参考資料
田中先生の裁判のホームページ
裁判費用の支援
https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000070